当院が理論基盤とするポジティブ心理学では、「幸福」の研究がここ20年、絶え間なくすすんでいます。
今回ご紹介するのが、マイク・ヴァイキング『デンマーク幸福研究所が教える「幸せ」の定義』(晶文社)です。
デンマークは、国民の幸福調査では、上位にランクされることが多い北欧の国ですが、著者はデンマークの研究所に籍を置く研究者です。
ちなみに、国民の幸福調査では、尺度によってランクが変わることがあり注意が必要です。デンマークがたいていトップ3にランクされる指標は「世界幸福度」というもの(たとえば、2018年の最新調査では、第3位)で、「地球幸福度指数」では、2016年の最新調査では、32位に落ちてしまいます。したがって、北欧の福祉国家を理想とする左翼系政治家の意見には注意が必要です。
ともあれ、本書で参考になるコメントをいくつかご紹介します。
・世界幸福度調査によると、調査対象158カ国の幸福度に差が出る理由の4分の3程度は経済、健康、自由、腐敗、寛容さ、社会的関係の6つの要素によるようです。
・デンマーク人の自由は、憲法で保障されています。憲法には、人種や宗教、政治観、セクシャリティや性別によって人生の可能性を制限されない、と書かれています。・・・(中略)・・・デンマークの大半の人たちが、自分の生きる道を選べます。私たちは両親の収入にかかわらず、教育を受ける自由を持ちますし、たとえ同性であろうと、だれでも好きな人と結婚する自由を持ちます。発言し、移動し、考える自由を持ちます。これらすべてが、デンマークを幸福な国たらしめる要因となっています。
などなど、幸福研究の最新結果が分かります。これを見ると、現在の中国の全体主義政策がいかに国民の幸福度に反しているかが分かります。国民の自由がありません。ちなみに、中国の憲法には「宗教の自由」を“建前”うたっていますが、実際は、カトリックの司教でさえ、ローマ法王が自由に任命できなくなっています。
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